TBSラジオ「たまむすび」アメリカ流れ者のコーナーで映画の解説をしている町山 智浩さんの書籍『映画と本の意外な関係!』を読みました。ところどころラジオで解説された内容もありますが、ラジオよりもさらに詳しく解説されています。
さまざまな映画と本が紹介
『映画と本の意外な関係!』は、まえがき~第22章までにわたり、さまざまな映画と本の関係が解説されています。各章の文章量は多くないので簡単に読めますが、紹介されている映画と本の数はかなりの数になります。映画をもっと深く楽しみたい人におすすめの書籍です。
タイトルについて
この書籍では映画に登場した本や、映画に影響を与えた本について書かれていますが・・・読み進めると本と全く関係しない章もあります(笑)。どうやらこの書籍は町山智浩さんが雑誌『kotoba』に連載している「映画の台詞」に関するコラムを集めたものだそうです。
なので本来は『映画と台詞の意外な関係!』とタイトルされるべきところを、あえて『本』としているようです。よく考えてみたらタイトルを『映画と台詞の意外な関係!』としてしまったら売れなかったかもしれませんね・・・なぜなら映画にとって台詞は必須の関係ですから(笑)。
本と関係しない映画解説も重要
映画『メイド・オブ・オナー』『ニーナ・シモン 魂の歌』『ラブ・アンド・マーシー 終わらないメロディー』などの章では本と関係した内容ではありません。しかしアメリカの政治や文化を理解していないとわからない背景について解説されています。
特にトランプ政権となった現在では『007』の下ネタを解説した章は教養としての重要性を増しています(笑)。プッシーやゴールデンフィンガーをもじったゴールデン・シャワーなどの表現は全世界のメディアを騒がしたばかりですから・・・。
掲載された映画のリスト
この本に登場するすべての作品をリストにすると大変な量になってしまうので、各章で取り上げられているメインの映画について下記にまとめてみました。
映画の本棚―まえがきにかえて
『渇き。』
『アンブリン』
『イット・フォローズ』
『インターステラー』
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』
『グランド・ブタペスト・ホテル』
『ベルリン・天使の詩』
第1章
『インセプション』
『ポセイドン・アドベンチャー』
『寝取られ男のラブ・バカンス』
『世にも奇妙な物語』
第2章
『ウォール・ストリート』
第3章
『トゥルー・グリット』
第4章
『ミッドナイト・イン・パリ』
第5章
『スーパー・チューズデー』
第6章
『メイド・オブ・オナー』
第7章
『ファミリー・ツリー』
第8章
『恋人たちの予感』
第9章
『007 スカイフォール』
第10章
『リンカーン』
第11章
『ソウルガールズ』
第12章
『サ・イースト』
第13章
『恋人までの距離 (原題:ビフォア・サンライズ)』
『ビフォア・サンセット』
『ビフォア・ミッドナイト』
第14章
『あなたを抱きしめる日まで』
第15章
『物語る私たち』
第16章
『ゴーン・ガール』
第17章
『バードマン』
第18章
『ニーナ・シモン 魂の歌』
第19章
『ラブ・アンド・マーシー 終わらないメロディー』
第20章
『キャロル』
第21章
『ブルックリン』
第22章
『眼下の敵』
『デンジャラス・マインド』
『いまを生きる』
『きみに読む物語』
『さよならゲーム』
『ソフィーの選択』
難しそうな小説や詩が掲載されているが・・・
『映画と本の意外な関係!』ではさまざまな映画のテーマを扱っているので、アーサー・C・クラーク、シュテファン・ツヴァイク、アーネスト・ヘミングウェイなどの作家から、ディラン・トマス、ウオルト・ホイットマン、エミリーディキンソンなどの詩人まで、さまざまな作家の名前が掲載されています。一見すると難しそうな小説や詩ばかり紹介しているなぁと思えますが、町山智浩さんが解説を書くと興味がわいてくるから不思議です。
ちなみに恋愛映画や哲学的な問いとしての愛に興味すらない私が、第17章に掲載してあるレイモンド・カーヴァ―の詩『最後の断章』に共感してしまいました。たぶん第13章『ビフォア・ミッドナイト』から第16章『ゴーン・ガール』の章までに愛について考えさせられる映画が紹介されたうえで、最後にレイモンド・カーヴァ―の詩を読まされたからだと思います。第13章『恋人までの距離 (原題:ビフォア・サンライズ)』で愛について語りあう男女の描写を読んだときには「くだらない会話だなぁー」と思っていはずなのに・・・(笑)。本当によくできた本だと思いました。